TENNOZ × PEOPLE #04
KAZESORA 〜風空〜 No.4 ※こちらの記事は2015年3月18日の記事です
素材を見つめる力と、お客様を見つめる心で
最上階で最高のひとときを
天王洲アイルで料理をふるまうヒト
野口 武
株式会社阪急阪神ホテルズ 第一ホテル東京シーフォート
鉄板焼 天王洲 統括シェフ
お客様一人ひとりにオーダーメイドの鉄板焼きを
天王洲アイル駅からシーサイドへ。第一ホテル東京シーフォートの最上階、28階に鉄板焼「天王洲」はある。地上100m、一面ガラス張りの店内には、東京のパノラマが眼下に広がっている。穏やかな東京湾へ船が行き交い、夕方にはレインボーブリッジが存在感を増し、六本木や新宿のビル群まで、煌びやかな夜景をカウンター全席から味わえる。
「普通のレストランとは違い、シェフが目の前で焼き上げるのが鉄板焼きの醍醐味。ゆったりと食事を楽しまれるお客様が多いですね」
とは、統括シェフの野口氏。国産牛ステーキなど本格的な鉄板焼きが楽しめ、魚介も肉も少しずつ両方を楽しめる“なでしこランチ”など女性一人でも気軽に来店できるよう工夫し、多くの人に鉄板焼きを楽しんでもらいたいという。
「ディナータイムは、もちろんこの夜景が自慢。そして、絶景を楽しみながら、熟練シェフのパーフォマンスと、そこで生まれる会話を味わって欲しいですね。テーブルを囲んだ食事とは、ひと味違う空間を過ごしていただけると思います」
色を変え、温度を変え、食材が“料理”へと変化していく姿は、旬を感じ、香りまで楽しめる瞬間。訪れた子どもたちも釘付けになるという。
「お子さまの好きな素材を、大人より少し柔らかめに焼いたり、お客様一組ひと組の年齢や好みに合わせて、私たちは調理していきます」
オーダーメイドの一皿は、きっと一晩を忘れられないひとときに演出してくれるだろう。
の頭文字をとった造語。
鉄板焼きは“一期一会” 記念日を、最高のひとときに
「中学生の頃、遊びに行った同級生の家で何気なく出された“カナッペ”に衝撃を受けました。今思えば、思春期の男の子が料理の道へ進もうとしたきっかけ。私にとって、一期一会ですよね。人生には、そうした何気ない出会いが、大きく影響することがあるでしょう」
厳選素材をホテルの最上階で楽しむ、となると記念日に訪れる顧客が多いという「天王洲」。“記念日プラン”の提示や、食べられない食材が無いかなど、来店前からの細かな気配りはもちろんのことだが、その“出会い”自体を野口シェフは大切にしているという。
「そもそも、鉄板焼きとは、極上の素材との出会いを大事にする調理スタイル。手をかけるより、手をかけすぎないよう、よく見ておくことが大事です。いらっしゃるお客様も同じ。積極的に話かけなくとも、よく見て、以前いらした方ならどう過ごされていたか思い出しながら、接客しています。話上手ではなくとも、一組ひと組よく見ていれば、自然とそこに会話が生まれるんです」
というのも、記念日には必ず「天王洲」という顧客が多く、帰り際に一年後の予約を入れる人が多いのだとか。もちろん、記念日の直前に予約を入れたとしても、一年前と同じシェフが担当できるように配慮しているという。
「それぞれに、お客様との一期一会を楽しんで欲しいから、うちのシェフ全員に笑顔でカウンターへ立ってもらうことが、私の“統括シェフ”としての役割ですね」
素材を見つめる料理人としての力、お客様の心を見つめる心づかい、若手シェフを送り出すあたたかさを持って、野口シェフの織りなす「天王洲」という鉄板焼きスタイルが成立している。
野口シェフの一皿を堪能し、家族で笑い合ったあと、ふと顔を上げると、来た時と表情が違う天王洲の景色が見えるのかもしれない。
PROFILE | のぐち・たけし
東京都出身。1984年株式会社第一ホテル(現:株式会社阪急阪神ホテルズ)に入社。数々のレストランを経て、2011年より鉄板焼「天王洲」のシェフに就任。品川神社にて開催される「品川かぶ」の品評会へも参加するなど、地元の食材もうまく取り入れながら、上質な素材を最大限に活かした“素材ありき”の鉄板焼きを提供している。「美しい海や夜景を見ながら、シェフとの会話や素材が焼かれる瞬間を、ぜひお楽しみください」
取材協力 | 鉄板焼「天王洲」
ホテル最上階の鉄板焼「天王洲」。レインボーブリッジを望む東京ベイサイドクラブの大パノラマとともに落ち着いた雰囲気の中で、神戸牛ステーキをはじめ黒毛和牛、魚介などを贅沢に楽しめる。さらに夜になると宝石をちりばめたような煌く夜景が眼下に広がり、珠玉のディナーコースなど充実のメニューを堪能できる。
03-5460-4430(直通)
品川区東品川2-3-15 第一ホテル東京シーフォート28階
https://www.hankyu-hotel.com/hotel/dhtseafort/restaurant/37/index.html
KAZESORA 〜風空〜 No.4
2015.03.18.の記事です。
Direction & Design:Shigekazu Katsumata 勝又シゲカズ BTTB inc.
Text:Eri Sakuma さくまえり
Photographer:Soichiro Kosuga 小菅聡一郎
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